
ハタイクリニック西脇俊二医師に聞く。「がん予防のカギを握るは消化力」と語るのは、ハタイクリニック院長で、弊社の顧問ドクターでもある西脇医師。「消化力」とはどんな力なのか、またどうすれば消化力をあげられるのか、先生にお聞きしました。
ハタイクリニック(東京都目黒区)は西洋医学とインドの伝承医療アーユルヴェーダをはじめとする様々な代替医療を組み合わせた統合医療のクリニック。心・身体・食事の3方向からアプローチし、がん治療がん予防で全国の多数の患者さんから支持を集めています。「現代人の不調ひいては生活習慣病やがんなどの病気はほぼすべて消化力に関係しています」(西脇院長)
西脇院長のいう「消化力」とは食物が胃腸で分解されて吸収、そして栄養素が代謝され、体に必要な物質が生み出されるすべての過程のこと。院長が治療の核に据えるアーユルヴェーダでは、体の不調を特定の器官の問題ではなく、体全体の問題としてとらえるのが特徴で、消化力の考えもそこから生まれたものです。
「現代人は、早食い・咀嚼不足・不健康な食事・ストレスといった生活習慣によって胃酸、消化酵素の分泌が減少し、食べ物をうまく分解できていません。すると、腸内で未消化のタンパク質や脂質が腐敗して慢性的な炎症を起こし、大腸がんの温床となります」さらに、消化力の低下は免疫系の不調も引き起こすとのこと。 「食物が分解が不十分だと吸収もうまくいかず体は栄養不足に陥ります。代謝もうまくいかず低体温となり、免疫システムが正常に働けなくなってしまうのです。とくに腸は免疫細胞の70%が集中している臓器。腸内環境が乱れていると、 免疫システムがうまく機能せず、 がん細胞の増殖を許してしまうのです」
では消化力を高めるにはどうしたらいいのでしょうか?分解の段階では、食事の改善点を指摘します。
「まず、白米よりも玄米がおすすめです。玄米は腸内細菌のエサとなる食物繊維が多く、腸内環境を整えます。高温調理のものよりあっさりした煮込みを食べることも効果的。『茹でる、蒸す、煮る』調理方法がベターです。参鶏湯はとてもおすすめです」
整腸効果がうたわれるヨーグルトは合う人と合わない人があるので、しばらく食べて自分で体調を見極めることが大切とも。
「精神状態の影響も小さくありません。リラックスすれば胃酸は分泌されやすくく、分解されやすくなります」
吸収の段階では、腸壁の健康維持を心がけるべきと指摘。
「腸壁に穴が開く『リーキーガット症候群﹄という病気には注意が必要です。糖質の過剰摂取、アルコール、食品添加物、ストレス、農薬などが原因。日常生活から意識的に減らすとよいでしょう」
代謝段階では、代謝の主役である酵素を助ける補因子の必要性を強調します。
「アミノ酸から神経伝達物質がつくられるには、酵素が働く必要があり、その酵素を働かせるためにはビタミンC、ビタミンB6、鉄、亜鉛といった栄養素が欠かせません・これらは現代人の多くが不足している栄養素。消化・吸収がうまくいっても、これらの栄養素が欠けているために、心身の不調を抱える方が少なくないのです」
がん予防や健康づくりというと、「何を食べるか」にばかり意識が向きがちです。しかし、本当に大切なのは「きちんと分解・吸収・代謝できているか」。胃酸・胆汁・膵液などが十分に分泌されているか、腸内環境が整っているか、代謝に必要な栄養素が吸収されているかに目を配る必要がありそうです。